2015年05月22日

ロッキングプレート ~よりよい治療を目指して~

こんにちは。

院長の窪田です。

新しい治療器具を導入しました。

実は、今年の一月にご報告しましたが
(って、もう忘れてますよね!http://hatorinoah-blog.seesaa.net/article/412611728.html)、
比較的新しいプレート法である<ロッキングプレート>を導入いたしました。

プレートというのは、骨折の治療に使われる、骨と骨をくっつけて固定するための金属です。

昔ながらのプレートをロッキングプレートに変えることで、より安全で治療効果の高い手術が可能になるのですが、今回はこれについて、ちょっと詳しく解説いたします。

実は当院のような一般病院で遭遇する骨折は、ほとんどが<橈尺骨折>です。

え?橈尺・・・骨折?何ソレ?って感じですよね。

橈尺骨とは前腕部の骨です。肘~手首の間と思ってください。

最近とても多いトイ種といわれる小型犬(トイプードルとかポメラニアンとかetc)では、弱い力でこの橈尺骨が折れてしまうのです。

例えば・・・
◆抱っこして落ちた
◆ローテーブルとかソファーから落ちた
◆側溝にはまった


え?そんなんで折れちゃうの!?
という、日常で起こり得る軽い事故で折れます。困ったもんです(-_-;)
トイ種の橈尺骨は割り箸のような細さなんですよ。

で、さらに困ったことに、細いだけでなく血液の流れも少ないので、
折れてしまうとそもそもとても治りにくい場所なんです(-_-;)

イヤですねぇ。。。

でも治療しないといけませんので治療のお話です。

多くのケースで折れると外科手術が必要です。
手術法はプレート法を使うことが多いのですが・・・、難しいことに、昔ながらのプレート法で骨を固定すると、プレートが骨の治癒を阻害してしまい「なかなか骨がくっつかない」というトラブル(=癒合不全と言います)が一定の割合で起こってしまうとされているのですね。

幸い今まで私が行った手術症例で癒合不全がおきたことはないのですが、いろいろな人の話を聞くとそんなに珍しいことではありません。

そこで!この、ロッキングプレートです!

この比較的新しいプレート法だと、骨の治癒反応の阻害を最小限にして、かつより強く固定できるため、この癒合不全がほとんど起こらないとされています。

もともとは人間の骨粗しょう症用に作られた道具なんだそうです。スゴイですね。

これは、トイ種の橈尺骨折にはとても有用です。そもそも治癒しにくい場所だけにロッキングプレートを使う価値は非常に高いでしょう。

ロッキングプレートについては過去に何度か、講義や実習を受けてきました。
機材も導入し、つい先日も講習を受けて、さらにアップデートしています。

不幸な事故にあった動物たちを、よりよい方法で治療することが可能になりました。

ロッキングプレートだけでなく、今後も本当に有用な治療法についてはどんどん導入していきたいと思います。そして、それについての勉強も頑張らねばなりません。一歩一歩、地道に努力です。

今後も、はとりの動物病院をどうぞよろしくお願いいたします。

院長 窪田
posted by はとりの動物病院 at 18:53| Comment(0) | 動物医療の話 | 更新情報をチェックする

2015年04月05日

歯石除去~ ひめちゃんの1日~ part3

続きです。
※前回の記事はこちらから
http://hatorinoah-blog.seesaa.net/article/416710453.html


入院のお部屋に戻ったひめちゃん。
20術後すぐf.jpg
まだ眠たそうです。

麻酔終了30分後。
21術後30分f.jpg
まだ少しうつろですが、眼はしっかりと覚めていますよ。

麻酔終了後1時間。
22術後1時間f.jpg
もう見た目にはいつもと変わりありません。

麻酔終了後2時間。
23術後2時間f.jpg
スッキリ醒めています。「帰りたい…」と言っているみたいですね(笑)。
ご家族のお迎えまでもう少しガマンしようね。


いかがでしたか?全身麻酔と歯石除去がどのように行われるか、少しはイメージがわきましたでしょうか?全身麻酔も歯石除去も、細心の注意と確かな手順で行うことがとても大事ですね。

ひめちゃん、本当にお疲れ様でした。

歯石除去後は日常的なケアで歯の健康を保ってもらうようにアドバイスしています。
わんちゃんの場合は、歯みがきでとれる歯垢という汚れが3日で歯石(歯みがきではなかなか取れない汚れ)になる、といわれていますので、毎日の歯みがきを習慣づけてもらえると、きれいな状態を保つことができます。

でも、
「歯みがきをやったことない…」
「歯みがきは嫌がる…」
「口を開けてくれない…」
なんて子がほとんどです。

当院では歯ブラシになれてもらう方法や歯みがき以外でもお口の健康を保ってもらえるようなアイテムをご紹介しています。

いつでもお気軽にご相談ください。

さて、締めくくりにもう一度大事なお話をしたいと思います。

今回の歯石除去の記事の一番最初で、
「当院では歯石除去を全身麻酔下で行います。」
という宣言をしました。覚えていますか?
(※part1を見てね!http://hatorinoah-blog.seesaa.net/article/416657395.html

これまでの内容を見てもらえば、その理由が何となくお分かりいただけたのではないかと思います。

無麻酔で行う施設もあるようですが・・・、
(実際は無麻酔ではここまで細かい作業は行われていないと思いますけど・・・)

◆動物が動いてしまって、尖った器具が思いもよらないところに刺さってしまったり…(危険です)
◆処置に使う水や取った歯石を誤って飲んでしまったり…(誤嚥の恐れがあります)
◆無理にお口をあけたせいで歯みがきに恐怖心を抱いてしまったり…(処置後のケアができません


など、リスクとデメリットが大きすぎるため、当院では無麻酔での歯石除去処置は行っておりません。

全身麻酔はキケンなんじゃないかと不安をお持ちの飼い主さまもいらっしゃるかもしれませんが、当院のスタッフは、常に安全に全身麻酔を行えるように日々努力し、研鑽に勤めています(当たり前ですが)。

<麻酔自体がキケン>というよりも、<麻酔を正しく行えない人間がキケン>なのです。

もし全身麻酔に関する不安点や疑問点があれば、遠慮なくスタッフにご相談くださいね。

3回にわたったブログにおつきあい頂き、ありがとうございました。またひめちゃん、掲載を快諾していただいたひめちゃんの飼い主様、ご協力ありがとうございました。


くぼた
posted by はとりの動物病院 at 10:04| Comment(0) | 動物医療の話 | 更新情報をチェックする

2015年04月03日

歯石除去 ~ひめちゃんの1日~ part2

前回の続きです。
※前回の記事はこちら
http://hatorinoah-blog.seesaa.net/article/416657395.html


いよいよ歯石除去・歯周病治療です。

「歯石をけずり取ったら、それでおしまいでしょ?」
と思われるかもしれませんが・・・、

いやいや!そんなに単純なものではありませんよ。
歯石除去の処置では実際は、何工程も作業があるのです。
これからご紹介していきますね。

と、その前に。

なぜ歯石をとった方がいいのでしょうか?
お話しておきましょう。

実は目に見える歯石それ自体は死んだ細菌と食べカスの塊なので直接悪さをするわけではありません。ただ、歯石があると生きている歯周病菌がそこに住み着くので、きれいにしておいた方がいいのです。この歯周病菌は歯を支えている骨を溶かしたり、歯肉の炎症や口臭の原因となったりします。

歯周病とは「最終的には顎の骨が腐っていく感染症」という恐ろしい病気なんですね。

また歯周病菌が原因となって全身のいろんな病気を引き起こすともいわれています。

さあ、それでは歯石をとっていきましょう!
まずは目に見える歯石をスケーラーと呼ばれる器具ではがしていきます。手用と超音波式の2種類の器具を使い分けて、細かいところまできれいにしていきます。
07左側.jpg
08左側f.jpg

尖った器具を使用したり、たくさん水を使用します。
無麻酔では危なくて行うことができません。


次に外からは見えない歯周ポケット内をきれいにしていきます。
歯周病が進行しているとポケット内部にも歯石や歯周病菌などの汚れがたまっています。キュレットというさらに細い器具を使っていきます。これも手用と超音波式とあります。
IMG_0026.JPG

見た目には大分きれいになりました。

ここから仕上げにはいります。歯の表面を器械で磨いていきます。
二段階の磨き上げを行い、歯の表面を滑らかにして、歯周病菌が住みにくい環境にしていきます。実はこの作業もとても大切です。
IMG_0028.JPG
IMG_0030.JPG


さらに歯周ポケットに長くとどまるお薬を注入して…。
IMG_0031.JPG

お疲れ様!
きれいになりましたね。歯石除去が終了しました。

IMG_0034.JPG

歯の裏や奥歯にたくさん歯石がたまっていました。
幸い抜けてしまう(抜かなければいけない)歯はありませんでした。
(歯周病が進行すると歯が抜けたり、抜歯が必要になったりします)

抜歯がなければ30分から1時間ほどで処置は終わりです。

さて、これで全身麻酔も終了です。入院のお部屋に戻りましょう。

頑張ったね、ひめちゃん。

麻酔を覚ましていきます…
次回に続く…

※part3はコチラ
http://hatorinoah-blog.seesaa.net/article/416801990.html
posted by はとりの動物病院 at 12:04| Comment(0) | 動物医療の話 | 更新情報をチェックする

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