2016年03月18日

超音波検査のお話

院長です。今日は超音波検査のお話。検査のお話シリーズ化!?の予定です(笑)

さて、超音波検査、エコー検査とも言ったりしますが、言葉ぐらいは聞いたことがある方が多いと思います。

以前もブログでご紹介しました。
超音波検査① http://hatorinoah-blog.seesaa.net/article/402228424.html
超音波検査② http://hatorinoah-blog.seesaa.net/article/402228476.html


「超音波」を体に当てることで、体の中を非侵襲的に(=ダメージを与えないで)見ることができる検査ですね。

見ることができる、と言っても基本は白黒画像なので、ありのままが見えるわけではありません。が、他の検査と組み合わせて評価することで、病気の診断には非常に有効なのです。また、血液の「流れ」に「色」を付ける機能もあり、この機能は特に心臓病の評価に役立ちます。
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↑↑エコーは白黒ですが、小腸の細かい構造まで評価できます↑↑

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↑↑血流にカラーを乗せると心臓病の評価に役立ちます↑↑


α7.jpg基本は、麻酔などをせずにエコー検査が可能です。エコー検査で得られる情報はとても多く、当院でも最もよく行う検査の一つとなっています。

検査の様子はこんな感じです。

当院では、写真のように心臓(胸部)を見るときは横向きになってもらうことが多いです。腹部を見るときは、だいたい仰向けに寝てもらいます。動物には、少しの間だけご協力いただくことになりますが、基本はそれほど時間のかかる検査ではありません。ほとんどの動物が、おりこうに検査をやらせてくれます。なお、検査部位は毛を刈る必要がありますので、それだけはご了承下さい。

さて、このエコー検査。

どんな場面で活躍するのでしょうか?

少し例を挙げてお話ししてみましょう。

例えば、犬の慢性心臓病の代表ともいえる、僧房弁閉鎖不全症(この写真の例ですね)。この病気はジワジワ進みますが、症状はかなり進行した段階にならないと出ません(ご家族が気付きにくいのです)。

実際は、ほとんどの場合、身体検査時の「聴診」で初めて気づきます。

しかし!

聴診(心音)だけでは、心臓がどのくらい悪くなっているかは評価できません。

そこで、エコーの登場です!

エコーで心臓の動きや内部構造をみることで、どの程度まで病気が進行しているかを評価するのです。

これは、非常に大事なことで、細かい評価をすることで、よりよい対応(=治療方針の決定)が可能になります(※心臓病の評価には、ほかにX線検査なども必要です)。

他にも、胃腸系のトラブル、腎臓や膀胱など泌尿器系のトラブル、子宮など婦人科系のトラブルなどでは大活躍します。拡大しての評価もできるため、膵臓や副腎といった小さい臓器の検査も得意です。

ですから、エコー検査は、当院を含め多くの動物病院で不可欠な検査となってきているのです。


さて、今回のお話も最後になりますが・・・、

このエコー検査装置。
実は、このたび当院の機械が新しくなりました(^^)/

以前のモノよりも、より詳細な検査をすることができます。

まあ、機械だけがよくなっても、もっと大事なのは検査をする人間です。

私は以前、夜間救急病院に勤めていたとき、画像診断専門医の資格を持つ獣医師に直接エコー検査の指導を受け、その先生の講習も定期参加し知識や技術を身につけてきました。また、大学の非常勤研修医のときも、画像診断に携わっていましたので、今でもある程度の自信をもってエコー診断に臨んでいます。が、獣医療はどの分野も常にアップデートしなくてはいけません。エコー検査についても、私もまだまだ足りないところがたくさんあります。いい機会ですので、よりエコーの診断技術を高め、皆様のご家族のお役に立てるよう努力したいと思います。

院長 窪田
posted by はとりの動物病院 at 12:48| Comment(0) | 動物医療の話 | 更新情報をチェックする

2016年02月05日

セミナー参加しました(耳道外科のお話し)

院長です。

最近ブログ更新、サボってました(-_-;)

セミナー参加ご報告も久々です。
が、こちらはサボっていたわけではありませんよ(^^;)

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今回は恒例の、スーパー手術屋、中島尚志先生による【耳道外科】のお話。
アップデートしてきました!

2016-02-05 09.04.50.jpg

さて、耳道切除という手術があります。

一般の方からすると、

『え!? 耳、切っちゃうの?』

てな感じだと思います。

正しくは、【外耳道】、という場所の手術です。
外耳道とは、【外界と鼓膜までを連絡する道】、です。
地上入口から地下鉄の改札口まで、みたいなもんです(余計わかりにくいですか?)。

動物の飼主さんの多くは、【外耳炎】、という言葉は聞いたことがあると思います。
(外耳に炎症を起こした状態を指すコトバです。診断名ではありません。)

で、外耳炎の原因にもよりますが、外耳炎をコントロールする方法の1つとして、耳道切除という手術が必要になります。

さて、この外耳炎。とても大事なことが1つ。

身もフタもない言い方ですが、

『治りません!』

いやいや、治りましたよ!と言ってくれる人もたくさんおります。

『先生のおかげで治りました!ありがとうございます!』
と言われれば、確かに嬉しいものですが。。。

実はこれは、厳密には治ったわけではありません。

実は一度外耳炎を起こした耳は、耳道内の分泌腺の構造や数が変化して、元に戻らなくなってしまいます。

そのため、必ず、再発するのです。

そして、必ず、進行していきます。


治ったように見えたのは、一時的に炎症が落ち着き、コンディションがよくなっただけなのです。

現場でも、
・外耳炎に一度もならない動物は、全然ならない。
・外耳炎に一度でもなると、繰り返し外耳炎で来院。

これが普通です。

よく再発時に、

『またなっちゃいました』

と言われてしますが、それが当たり前なのです。

なるべく、コンディションのいい状態を保つには、耳垢の除去などの、日常ケアが大事になります。炎症が軽いうちに早めに投薬することも重要です。こういうケアをしていても、少しずつ進行するのですが、うまくいけば、手術が必要な状況までにならず、一生を過ごせることもあります。

しかし、実際はケアや内科治療だけではコントロールが難しい、進行性の外耳炎がたくさん存在します。

その場合、耳道切除手術という治療法が、外耳炎のコントロールのための、重要な選択肢の1つとなるのですね。

外耳炎が末期的でなければ、耳道の一部を取るだけの、比較的容易な手術(外側耳道切開手術)を行うだけでも・・・、

耳道の環境が大幅によくなります。

よって外耳炎のコントロールが劇的にラクになります。



ただし・・・、一般の飼主の方に「手術」とお話しすると、
なんだか、最後の砦みたいに考えている人が多くて、

『どうしょうもなくなったら手術をー・・・』

みたいな、飼主さんが沢山います。

どの分野の外科手術でもそうですが、
病気が、進行すればするほど、末期になればなるほど・・・

★手術自体が難しくなります。麻酔時間も長くなります。
★重度の合併症が多くなります。
★満足いく結果が得られない可能性が高くなります。


手術をする方もされる方も大変なのです(-_-;)

しかし、いいタイミングで手術が実施できれば・・・

★手術が難しくないケースが多く、麻酔時間も短く済みます。
★合併症のリスクがグンと少なくなります。
★いい結果が出やすくなります。


良いことばかり。

外科手術というモノはあくまで、病気の治療法・管理法の一つです。病気の最初の時点でオプションの一つとして考えておくものなのですね。『最終手段』のように考えるものではありません!

この、耳道外科も、外耳炎が末期的になればなるほど、手術手技が難しくなります。末期的になれば必ず中耳炎になってますので、鼓室という鼓膜よりも奥の奥まで処置しなくてはいけません。難易度も高いですし、なにより合併症リスクがきわめて高くなります(-_-;)。

じゃあどうするか?

外耳炎は、必ず進行性で、本当の意味では治ることがない病態だ、という事は先にも述べました。

ですから、末期的になる前に、もっと簡単な手術で済むうちに、早期に外科治療の介入をしておくことが重要です。外科的介入の結果、耳道のコンディションを保つことが極めて容易になり、進行を抑えやすくなります。

講師の中島先生の言葉がとても印象的でした。

『獣医領域では、外耳炎は皮膚科と同じ領域で語られることが多く、手術が治療オプションとなりにくい。もっと早期に外科手術の介入をしていれば、末期外耳炎で苦しむ動物がグンと減ると思います。早期にやればやるほど外耳炎のコントロールが劇的に、ものすごーく楽になりますよ。』



当院にも、外耳炎の患者さんが多数来院しています。よりよいケアのために、必要なコには手術提案のタイミングを見誤らないよう、今一度注意して診療にのぞみたいと思います。

院長 窪田
posted by はとりの動物病院 at 12:16| Comment(0) | 動物医療の話 | 更新情報をチェックする

2015年07月21日

不妊手術と去勢手術 ~動物病院の手術料金はなぜ違うの?~

院長です。

不妊・去勢手術。

当院のような、一般的な動物病院では最も多い手術の一つですね。それだけ大事な手術でもあります。若いころに不妊や去勢を受けていただくことが多いのですが、その時に動物がイヤな思いをしてしまうと、手術をきっかけに病院が嫌いになったりもしてしまいます・・・。安心、安全な手術を心がけるのは当然ですが、動物たちの一生に悪影響を与えないような、細かな心づかいもとても重要です。

さて、その不妊・去勢手術についてですが、主に他病院との手術費用の違いなど、つまり料金的な問い合わせが多いため、一度はご説明したいと思っていました。手術を考えている方はもちろん、動物病院の料金について興味のある方もいらっしゃると思いますので、ぜひ最後までご覧になってみてください。

さて、まず大前提です。

動物医療は自由診療のため病院間での料金の取り決めは違法となります。
そのため、各種料金の設定は病院独自の判断で行っています。
料金が違うのはこのためです。むしろ違うのが当たり前と言えます。

なので、もちろん不妊・去勢手術も病院によって料金が異なるのです。

当院にも手術料金の問い合わせがチラホラ。
他と比較して高いよ!と言われることもチラホラ。

しかし。

今から重要なことを言います。

「料金の単純比較には、あまり意味はありません」

これは、不妊・去勢手術だけの事ではないのですが、今回はコレをテーマでお話していきます。

「え?でも、そりゃ安い方がいいでしょ・・・。」
という声が聞こえてきそう・・・。

まあ、確かにそう思うのが人情かもしれません。

では、そう思った方にちょっと質問いたします。

「100万円のクルマは高いですか?安いですか?」

・・・・・・・・・。

いきなりすいません(笑)
どうでしょうか・・・?

・・・と聞かれても、答えられないですよね?

なぜでしょう?

当たり前です。だって、この質問では、クルマの種類やら装備やら新品かどうかなど、つまりクルマの内容が全くわかりません。内容のわからないモノの値段がどうかといわれても困りますよね。たとえば、中古のオンボロ軽自動車なら高いでしょうし、フル装備の外車なら100万円なワケないですよね。オンボロでもプレミアがついている車種ならすごい安いと言えるかもしれません。

すいません、話がそれました。不妊・去勢手術の料金に戻しましょう。

では・・・、

「5万円の不妊手術は高いですか?安いですか?」

さて、どうでしょう?

実は、この質問も「答えられない」、というのが答えです。
(※この5万円というのは例えの話です。当院の料金設定は体重別です)

なぜなら、先ほどのクルマの例と同じで、これだけでは内容がわからないからです。

「え!?病院によって手術内容って違うの??」
と思う方がきっといますよね。

違います。

不妊・去勢が完了した、という結果だけをみれば同じといえるかもしれません。

しかし、そこに至る内容は施設によりだいぶ違うのが現状です。実はその内容の違いは重要なところなんですが、なかなか一般の方に把握できるところではないですよね。

なぜ、施設により内容が異なるのでしょうか?

一口に不妊・去勢手術といっても、麻酔や手術法、使用する薬剤、手術に用いる材料の選択などには、特別な決まりがないからなのです。

ですので、手術前検査や点滴の有無、鎮痛法、縫合糸の種類などなど細かな内容については、各々の施設が独自で決定しています。なので、施設によって、細かい違いがたくさんあるのです。

では、内容の違いについて、もう少し具体的に見てみましょう。

まずわかりやすいように、やや極端ですけど一例をお示しします。

とある病院の不妊・去勢手術では、

★鎮痛処置はしない・・・
★手術前検査はしない・・・
★静脈点滴はしない・・・

で、手術はする・・・💦

という「内容」だそうです・・・(-_-;)。
コストダウンのためなのでしょうか?できればウソであってほしい・・・。

ただ、そういう内容で実施する施設もあるということです。

ちなみに、もうなんとなくは想像つくと思いますが、この例はお世辞にもいい内容ではありません。確かに拘束力のあるルールはありませんが、様々な分野で大まかな指針(ガイドライン)は存在します。獣医師の裁量にはなりますが、なるべくよりよいと考えられる方法や内容を選択していく義務はあるのです。

さて、他にも細かな具体例を挙げてみましょう。例えば、「鎮痛処置してますよ」と宣言している施設があっても、その鎮痛処置の内容は、実は病院によってすご~く差があったりします。

消炎鎮痛剤のみの処方で「鎮痛管理しています!」という施設もあれば、消炎鎮痛剤だけでなく、局所麻酔や麻薬指定薬剤など複数の鎮痛薬を併用する施設もあります。実際は前者のような方法では、不妊手術などの鎮痛としては不十分と考えられています。動物は、「イタイ、イタイ」と声に出して言いませんから、わかりにくいところかもしれませんが・・・。

具体的な内容の違いについては、ほかにも使用する縫合糸の種類であるとか、手術前検査の内容とか、麻酔時のモニタリングであるとか、・・・などなど多数ありますが、ちょっと書ききれないので詳細は省きます。

要するに、施設によって「内容は全然違うかもしれない!」ということなんです。

ですから、何度もしつこいようですけど、内容が全然違うものを、料金のみで比較してもしょうがないんですね。

ときどき雑誌などで、『相場は〇〇円』、とかありますけど、これも内容を比較してないことがほとんどで、何の意味もないと思っています。

ただ、実際は一般の方にとって、細かい内容についてはよくわからないというのが普通でしょう。

なので、一応当院で行っている不妊・去勢手術の内容の一部を、簡単にですが紹介させていただきます。もちろん、詳細については遠慮なくお問い合わせください。

★手術前検査★
原則実施します。検査の内容は動物の状況にもよりますが、血液検査、X線検査など、必要と思われるものは実施いたします。

★静脈点滴★
原則実施します。麻酔薬による低血圧への対応や、循環確保のために必須の作業です。静脈に管が入っていますので、様々な薬剤の投与も迅速に行えます。

★疼痛管理★
当院では、麻薬指定薬剤を含む複数の鎮痛剤を併用します。なるべく痛みなく手術を終わらせることで、ストレスを最小限にして術後回復を早めます。こうすると病院を嫌いにならずにすむことも多いのです。また、鎮痛をしっかりしないと全身麻酔が不安定になり危険です。逆に鎮痛管理がしっかりしていると全身麻酔はとても安定します。つまり麻酔リスクも減らすことができるのです。

★縫合糸の選択★
血管結紮や腹壁縫合など体内に残す糸は、なるべく動物の一生に影響が出ないように、もっとも組織反応が少ないとされている吸収糸を使用しています。

と、あくまで一例ですが、安心、安全のために必要なことはなるべく実施するように心がけています。なお、当院の不妊・去勢手術料金はそれを含めたものとして設定しています(※持病があったり若くない動物の場合は料金が異なります)。

なかには、飼主さんに、「手術前検査はしますか?」とか、「痛み止め使いますか?」という選択を迫る施設もあるようです。が、私にはこれもよくわかりません・・・。プロとして獣医師の目線で重要・必要と思ったことは、積極的に実施すべきだと思うからです。

ですので、もしも、ウチの子は痛み止めはいらない!点滴はいらない!だから安くしてくれ!、という方がいたとしても、私はそういう方はお断りしますのであしからず(まあ、実際はそんな方はいませんけどね♪)。

不妊・去勢手術は、もしかしたら大事なご家族の一生に一度きりの手術かもしれません。当院では、動物の一生に悪い影響がでないよう、安心、安全を心がけて実施しています。料金のことも含め、ご不明点は遠慮なくお問い合わせください。

院長 窪田
posted by はとりの動物病院 at 10:59| Comment(0) | 動物医療の話 | 更新情報をチェックする

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