あっという間に6月も半ばです。
ワンちゃんのフィラリア予防、始めましたか?
病院のマルちゃんも・・・、パクリ。
おやつタイプで楽しく予防です(笑)
当院が推奨しているフィラリア症予防開始時期は
5月下旬または6月上旬からです!
まだの方はお早目に!
さて、フィラリア予防をしているご家族の方はとても多いんですが、どのように予防しているかまでを知っている人は、なかなか少ないようです。
今日も、
「最後の投薬は11月下旬~12月上旬になりますよ」
とお話ししたところ。
「???え!?そんなにいらないでしょ!?」
と怪訝な顔をされてしまいました(^^;)
(時には金儲けのためだろと、あらぬ誤解で怒られることも・・・)
フィラリア=蚊=とりあえず暑いとき、というイメージがとても強いんですね。
そこで、今回は、特にフィラリア症の予防期間のなぜ?について、
疑問にお答えできるように、ちょっと掘り下げてお話してみます。
詳しく話をすると少し複雑かもしれませんが、
興味のある方は知っておいてもいいかなと思います。
まず、フィラリア症の予防期間を決めるにあたり次の2つのことが重要です。
①フィラリア感染が成立する期間は5月初旬~11月中旬である
(※千葉県や南関東のお話です!)
②予防のお薬は体内に侵入したフィラリア幼虫を駆虫するお薬である
では、①からお話ししていきます。
フィラリアは蚊から感染するってのは、これはOKですよね?そして、その蚊は一年中飛んでいるわけではなく、暖かくなると活動しだします。しかし、今年一年がどんな気候か、暖かめの一年?寒い一年?、そんなの確定できませんよね?だから、蚊の活動期間も確実には決められません。エスパーや予言者ならわかるかもしれませんが、明日の天気も外れるのが世の常です。そこで、過去の気候データから感染期間を計算し推定する方法が有効となります(HDUを用いた方法です)。
(HDUについては→http://filaria.jp/html/hdu/)
で、過去15年分を計算し振り返っててみます。
すると、千葉県や南関東では
★感染開始はもっとも早くて5月上旬
★感染終了はもっとも遅くて11月中旬
となります。
(千葉県については→http://filaria.jp/html/hdu/kanto/index.html#chiba)
多くの獣医師はこのデータを基に予防期間を設定していると思います。
もちろんこれは過去のデータからの結果ですから、今年もこうとは限りません。3月からメチャクチャ暑くて真夏日バンバン超異常気象!みたいなことになれば話は別です。ま、何十年も先はわかりませんが、近い未来でそこまで極端におかしくなるということは、ほぼないと考えていいでしょう。
ちょっとだけ話がそれますが、あともう一つ。
「ウチの周りは蚊が多くて4月にはもうたくさん飛んでるよ。4月から必要ないの?」
というお話をよくお聞きします。川沿いなど、場所によってはそういうところもあると思いますし、確かに蚊、見ますよね。しかしながら、蚊が飛び始めてもすぐに感染するわけではないのです。簡単に言うと、蚊の中のフィラリア幼虫が感染可能な状態になるには、蚊の体内である程度成長するための期間が必要なんですね。寄生虫ってホント不思議ですよね・・・。で、そういうタイムラグも含めたものが上の結果なのです。
さてさて、長くなりましたが、まずはフィラリアの感染期間を理論的に推定する方法をお話ししました。
感染期間がわかれば、それに合わせてお薬を飲ませればいいワケです。
で、次に②番の
予防のお薬は体内に侵入したフィラリア幼虫を駆虫するお薬である
の説明に入ります。
私たちも、慣例的に「フィラリア予防薬」と称してお渡ししているお薬ですが、
実は正確に表現すると、
★フィラリア症予防薬
★フィラリア幼虫駆虫薬
なのです。
わかりやすく言うと、
フィラリア幼虫を駆虫することで、フィラリア症を予防しましょう。
ということになります。なんだか、回りくどいですけど。
(※フィラリア症とは簡単に説明するとフィラリア成虫が身体に寄生し悪影響を与えている状況と思ってください)
実際お薬の説明書にも<犬糸状虫症の予防>と、そう書いてあります。
(※犬糸状虫=フィラリアです)
なんとなくのイメージとして、薬飲んでると蚊に刺されなくなるんじゃないの?と思っている人が多いのですが、違うんですよ~!(そんな薬あればわれわれが欲しいですね)
実は、蚊に刺されて犬の体内に侵入したフィラリア幼虫は、しばらく皮膚の下でうろうろしています。その時はまだ非常に弱いので、お薬を飲むと簡単に全て駆虫できるのです。しかし駆虫のタイミングを逃し、ひとたび幼虫が血管に侵入してしまうと、駆虫がすごく難しくなります。で、最終的に成虫になって心臓~肺の血管に住み着いてしまいます(-_-;)。
ですから、そういう恐ろしい状況になる前に、定期的に投薬をして、フィラリア幼虫が弱いうちにやっつけちゃいましょう!!と、いうことを実際はやっているのですね。
ここまでで、お薬がどう作用しているかわかりましたね。
では、投薬期間はどうやって決めるのでしょうか?
くり返しますが、実際にやっているのは<幼虫の駆虫>です。
ですから、感染が始まる前に飲んでもフィラリア症の予防効果はないですよね。
駆虫と考えれば、感染が始まってしばらくしてから飲み始める、という感覚がわかると思います。そして最後のお薬は、感染が終了してしばらくしてから、ってのも同様ですね。
フィラリア予防薬の説明書にも記載されている、具体的な投薬期間は、
感染が始まって、1か月経ったころから投薬し、
感染終了後、1か月後に最後の投薬を行う。
となります(1か月で幼虫が血管に侵入することはありません)。
最終結論です。
この地域のフィラリア予防は
★5月下旬または6月上旬から開始
★11月下旬または12月上旬に終了
となります。
※ちなみに、ここでは詳細は省きますが、一年通してフィラリア症予防薬を飲ませる、通年投薬には様々な意味がありますので、方法の一つとして全く問題ありません。ワンちゃんの生活スタイルなどによっては通年投薬もオススメです。
さてさて、どうでしょう?これで、
★フィラリアの感染期間
★おくすりの投薬期間
のなぜ?にお答えできたでしょうか?
では、最後に一言。
毎年、わたしも頑張って説明しているつもりなのですが、必ずいらっしゃるのが、
「冬(12月アタマなど最後の投薬のこと)は寒くて飲ませなかったのよ」
「それで、余った薬を、蚊も出てるし、4月に飲ませちゃったわ」
という方です。
イメージ的にはよ~くわかるのですが。
フィラリア症予防としては申し訳ないですが・・・アウト(涙)
この行為は、
感染の可能性のある時期に予防せずに、
感染の可能性のない時期に予防している。
ということになります。
どうせやるのであれば、なんとなくのイメージでやるのではなく、しっかりと予防してあげましょうね。
では、長い文章の最後までお付き合いありがとうございました。
今年もフィラリア症の予防、頑張りましょう。
まだ予防を始めていない方も、間に合う可能性が高いですからお早目に!
★フィラリア予防のなぜ?よくある質問番外編★
Q. フィラリア予防のお薬だけ欲しいんだけど?
A. フィラリア症予防薬は要指示薬ですから、申し訳ないですが診察しないで出すことはできないんですね。獣医師法と薬事法に違反します。
Q. なんでフィラリア検査なんて必要なの?
A. 予防薬の能書(説明書)に獣医師に対しての努力義務として記載されています。理由はワンちゃんたちに安全に予防薬を飲んでいただくためです。
ということで、すいません。お手間ですけど一度連れてきて検査をしましょうね。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
院長 窪田