2016年03月24日

マダニ、ノミ、フィラリア・・・どう違う!?

院長です。今日は、犬猫の寄生虫の予防のお話です。

当院周辺では、1年通してマダニやノミの寄生が認められます。暖かくなると要注意なので、この3月からは特に予防のアナウンスを頻繁にさせていただいております。

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↑↑待合室にも予防スケジュールをわかりやすく掲示してあります!↑↑

ところで、このマダニ、ノミ、フィラリア・・・などの寄生虫。

みなさん、違い、わかりますか?

しっかりと理解されている方にとっては

「え!?、何をいまさら?」

という感じでしょうね。

が、一部の患者さんでは、

「何が何だか?????」

と、ゴチャまぜになっている方がいらっしゃるようです。

そこで、今回は、これらの「虫」についての基本中の基本をお話ししたいと思います。

ここからは、わかりやすいように「マダニとノミはセット」として扱い解説します。

では、行きましょう。

【違いその1 ~虫としての違い~】
マダニ・ノミ
★外部寄生虫→体の外側(皮膚被毛など)に寄生。
★成虫は目視できるサイズ。
★幼ダニ・若ダニは眼で見るのが困難な大きさ。
★ノミの幼虫・さなぎ・卵も眼で見えない
→マダニやノミはカラダの外につくので、寄生したらすぐわかるよ!と思っている方が多いのですが、要注意!!上記のようにマダニ・ノミの全ての段階が見えるわけではありませんよ!

フィラリア
☆内部寄生虫→心臓~肺の間の血管に寄生(最終的に肺動脈に寄生)。
☆フィラリア成虫は20~30cmだが体の中なので直接見ることができない。
☆フィラリア幼虫は小さく、蚊~動物の体内にいるので直接見ることができない。
→フィラリアは肺動脈という血管に寄生します。当然眼で見えません。寄生する場所が血管内なので、一度入ると駆虫が難しく、予防が重要と言えます。

<まとめ①>
寄生虫は外部寄生虫、内部寄生虫と分類可能です。虫ですから、サイズが大きいと思いがちですが、成虫以外は肉眼で見えないと思ってください。「見つけたから駆除」ではなくて、「見えなくてもいるかも?」と考えて予防することが大切です

【違いその2 ~予防が必要な時期~】
マダニ・ノミ
★野外では1年中存在している(冬場もいます!)。
★当院周辺では1年を通して被害を確認。
→動物の生活スタイルによっては1年を通しての予防を推奨。

フィラリア
☆蚊に刺されることでフィラリア幼虫が体内に侵入。
☆ただし、蚊が出ても平均気温などの条件が整わないと感染は成立しない。
☆この地域では、早くて5月初旬に感染成立、遅くて11月中旬に感染終了。
→予防の期間は5月末~11月末(もしくは6月初~12月初)。

<まとめ②>
予防期間については、このように明確な違いがあります。フィラリアの予防期間は、統計学的に感染期間を推定し決定するのが一般的です(HDUを用いた方法→参照http://filaria.jp/html/hdu/kanto/index.html)。対して、マダニとノミは1年中いなくなるということはありません。ですので、寄生のリスクによって、1年通しての予防が必要になります。


【違いその3 ~人間への被害~】
マダニ・ノミ
★たくさんの病気を媒介する、病気の運び屋。
★犬猫だけでなく、ヒトにも被害が大きい。
→ヒトもマダニやノミから直接病気をもらってしまうことがあります(SFTSなど→参照http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/3143-sfts.html)。さらに、例えば猫ひっかき病のように間接的にうつる病気もあります(参照→https://www.bayer-pet.jp/pet/library/disease/cat-scratch.html)。この病気は、ノミが寄生した猫や犬にひっかかれたり咬まれたりすることで、病原体がヒトに感染します(猫ひっかき病の被害は年間2万人とのこと)。このように、マダニ・ノミはヒトへの被害が深刻です。

フィラリア
☆基本的には犬に最も感染しやすい。
☆猫の感染が多いことが近年わかってきた。
☆ヒトに感染することはきわめて稀である。
→フィラリアはきわめて稀にヒトにも感染するとされていますが、マダニやノミがもたらすヒトへの多大な被害と比較すると、かなりのレアケースと言えます。

<まとめ③>
このように、ヒトへの被害を考えるとマダニ・ノミは非常に重要で無視できない存在です。マダニやノミによるヒトへの伝染病の被害は年間数万人規模とされています。また、犬猫への被害に目を向けても、当院では、フィラリア感染の犬は年に10頭以下ですが、マダニやノミが寄生した動物は軽く100頭は超えていると思います。確かに、フィラリアは一度感染してしまうと根治が難しいという面で、非常にこわい病気ですが、被害の数だけを見れば圧倒的にマダニやノミの方が多いのです。なお、もしマダニやノミを見つけても、安易に素手でつぶしたりしないでください。わたしたちに伝染病がうつってしまうリスクが高くなります!


さて、以上、基本的な違いをお話してきました。

今回お話しした、寄生虫はもちろん、ウイルス、細菌・・・etc。
病原体というものは、眼で見えないモノが多いのですね。

眼で見えないものは、なんだか実感がわきにくいですよね。
だからこそ、正しい知識をもって、しっかりと予防することが大切なんです。

これはマダニ、ノミ、フィラリア、だけでなく、ウイルスや細菌でも当然同じです。

「いやいや、マダニやノミは眼で見えるよ!」
と思っているそこのあなた!

眼で見えないステージ(幼ダニ、ノミの幼虫など)もあることをお忘れなく!


最後に、これらの寄生虫の予防は、

「犬や猫たちのため」、だけではなく、
「私たち人間のため」、でもあります。

この考え方も非常に重要です。

人間と動物がよりよい関係を築いて生活できるよう、病気の予防を心がけましょう!
posted by はとりの動物病院 at 16:38| Comment(0) | 動物医療の話 | 更新情報をチェックする

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