今回は、動物保険のお話です。関心の高い方も多く、加入者も昔よりだいぶ増えているようですね。動物保険の種類もすごく増えています。そして、当院でも質問や相談をお受けすることが多くなっています。
とはいっても、私たち獣医師や動物病院は、特定の動物保険をお勧めしたり、紹介する立場にはありませんので、このブログでは一般論と院長主観のお話となります。いろんな考え方や立場があると思いますし、私も保険のプロではありませんので、意見が分かれる部分もあると思います。一獣医師の参考意見として、もし興味があればご一読してみてください。
さて、まずは当院でよくお受けする「動物保険」に関する質問、厳選2つをご紹介します。そして、この質問にお答えしながら「動物保険」についてのお話をしていきましょう。
次の2つが良くお受けするご質問です。
質問1 「そちらの病院では、保険は使えますか?」
質問2 「どうやって保険を選べばいいかわかりません。窓口清算ができる保険がいいのですか?」
では早速、質問1からお答えしましょう!
質問1 「そちらの病院では、保険は使えますか?」
回答1 「すいません・・・わかりません・・・」
ん・・・?なんだそれ!?、と怒らないでくださいね。
ちょっと、乱暴かもしれませんが、実はこれが真理なのです。
あ、実際はこんな乱暴にはお答えしませんよ(笑)
では、「わかりません」とはいったいどういうことなのか?
きちんと説明していきます。
まず、この「使えますか?」の質問をされる方の多くは、実際は「窓口清算が対応かどうか?」ということを知りたいようです。これについては、動物病院によって、窓口清算対応をしている保険商品が違いますので、ご自身の保険名を病院にお話しいただければお答え可能です。(※ちなみに当院で窓口清算対応が可能な保険は1種類のみです)
しかし、今からとても重要なことを言います。
窓口清算ができる = 保険が使える
ではありません!!(すごく重要)
というか、
窓口清算ができるか?という事と、保険が使えるか?
という事は、そもそも、まっっったく次元の異なるお話です。
まず、窓口清算ができるか?については、
くり返しますが、動物病院によって、窓口清算可能な保険が違いますので、これは直接病院に聞いていただければOKでしょう。なお、後でも述べますが、窓口清算可能=常に保険が使用可能、ではありませんので注意してください。
しかし、保険が使えるかどうか?という質問については
「わかりません」というのが答えとなってしまうのです!
べつに意地悪で言っているのではありませんよ(^^;)
これから、ちゃんと説明しますね。
よく考えれば当たり前の事なのですが、「保険が使えるかどうか?」、というのは、
被保険者(飼主さんとそのペット)と保険会社とが、どのような補償内容で契約を交わしているか?という事で決まるのです。
そして、どのような補償内容で契約を交わしているか?という事については、もちろん、動物病院サイドはノータッチです。
つまり、私たち病院サイドは、どのような内容が補償されるかは知りえないのです。
逆に知ってたらマズいです。あなたの個人情報は漏れてますよ!(笑)
知らないものは判断のしようがないので、くどいようですが「わからない」というのが答えとなります。
わかりやすいように、保険使用の具体的な流れを簡単に説明してみますね(窓口清算以外)。
① 動物が病気やケガで来院。
② 病院で治療や検査を実施。
③ お会計時に診療明細、領収書、場合により診断書などをお渡し。
④ 診療明細や診断書などをもとに飼主さんが保険会社に保険金を請求。
⑤ 保険会社が請求内容を調査し、契約内容を基に保険金支払いを判定。
という感じになります。
この流れからもわかると思いますが、保険が使用可能かどうかについては、診療前には本当にわかりませんし、しつこいようですが、そもそも動物病院はその判断をする立場にないんですね。判断するのは保険会社です。
もし、動物保険にご加入の方がいましたら、今一度、ご契約の補償内容をよ~く確認していただくことをお勧めします。
・どのようなケースで保険適応になるのか?
・どのようなケースは保険適応外なのか?
・どの程度の補償をしてもらえるのか?
・使用限度や保険金の限度があるのか?
などなど、ご自身の契約は、いざというときのためよく把握しておいた方がよいでしょう。
今はほんとうに多種多様な動物保険があるようですね・・・。
日々の通院から手厚く補償をするものや、逆に通院などはカバーしない代わり、手術や高額医療の時に使える保険とかもあるそうです。時代は変わりましたね・・・。
さて、様々な保険があるという話が出たタイミングで、ここで質問2をお答えしましょう。
質問2 「どうやって保険を選べばいいかわかりません。窓口清算ができる保険がいいのですか?」
回答2 「一番大事なのはご家族とペットのニーズに合った補償内容の保険を選ぶことです。補償内容と窓口清算のことはまったく別の次元として考えましょう。」
ご家族のことを真剣に思って保険を悩んでいる方から多く受ける質問ですね。
残念ながら、私たち獣医師や動物病院の立場で、コレがいい!と名指しでは言えませんので、一般論をお答えすることになります。でも、大事なことです。
選び方の大原則は、
「保険は、自分のニーズに合った補償内容かどうかで選ぶこと。」
これを一番手に考えましょう。というか、すごく当たり前のことですいません
補償内容ってのは、商品の中身です。商品そのものですね。
それが自分の欲しかったものとピッタリ合うのか?
イイねと思えるものなのか?
例えばですが、
手術時の補償は欲しいケド、通院の補償はウチには必要ないな…、などなど。
ご家族やペットの状況から、ニーズが違うはずです。
どんな商品を購入するときも、きっと、いつもは当たり前に考えていることなんですけど、こと保険になるとコレができない方がいらっしゃるようです。
今のご家族とペットのニーズに合っているか?まずは、そこで選んでください。
ここで、窓口清算の話がでてきますが・・・。
よく、「窓口清算対応かどうか?」ということを1番手として選ぶ方がいるようです。
さてしかし、よ~く考えてみてください。
窓口清算対応可能か?ということと、ペットの補償内容とは、本来は全く関係のない話ですよね?
ざっくり言うと、窓口清算対応可能 = 保険金請求の手間が省きやすい、という事がメリットとなります。繰り返しますが補償内容とは関係がありません。もし、窓口清算対応の商品でも、それがご自身のニーズに合わない補償内容の商品であればどうでしょうか?あまり意味がないと思いませんか?もちろん、ニーズに合っていた商品がたまたま窓口清算対応ならラッキーですよね。
窓口清算ができることが一番大事なんだ!!と考えるのであれば、そういう選択の仕方もアリかもしれません。しかし、「保険」という商品の選び方の王道ではないと、私は思います。
さて、窓口清算については時々誤解などもあるため、ここでちょっと解説を加えておきますね。
まず、窓口清算はいつでも可能!というように考えている方もいますが、決してそうでもありません。各条件が整わなかった場合などは、ご自身で保険会社に請求していただくこともあります。
※条件が整わないときに、たまに、「なぜ窓口でできないんだ!?」と怒られてしまうことも・・・。しかし、多くは保険会社と飼主さんの間の契約上の問題なので私たちにはどうすることもできないのです。
また、窓口清算というのは、本来保険会社が行うべき、「保険適応かどうか?」という最も重要な判断を、動物病院がとりあえず代理で行う、ということをやっているのですね。
人間がすることですし、そもそも動物病院の獣医師は保険会社のスタッフではありませんので、意志疎通が思うようにいかないと、そこで誤りが起こることもありえます。たとえば病院側が保険適応だと思っても、保険会社が違うと判断することがあるかもしれません。その時は、当然、保険会社の判断が優先されます。動物病院でのお会計時に一度使えたと思っても、後でアウトという事もあるのはこのためです。なるべくそうはならないように努力して処理をしていますが、飼主さんが契約している相手は保険会社ですから、そちらの判断が優先されることはご理解ください。
※窓口清算後しばらく後の保険会社の調査でひっくり返ることがあるそうなので、窓口清算時に使えたかどうかについては、本当の意味ではわからないのです。
この窓口清算というシステムは、私たちの国民皆保険制度と同じような感覚で捉えてしまう方が多いのですが(保険会社もそうやって宣伝していますし・・・)、実際は似て全く異なるものです。これと混同していつでもどこでも保険適応♪と思っている方がいるようですが、そもそも本質的に人間の(日本の)皆保険とは全くの別物と理解してください。窓口清算が可能な動物保険が、実は非常に特殊な存在なのです。
さて、今回の動物保険のお話のまとめです。
① 保険が使えるかどうか?については、保険会社との契約内容によります。日ごろからご自身のペットの契約内容をよく確認しておきましょう。契約内容は個人情報ですから動物病院は把握しておりません。
② これから、保険をお考えの方は、その商品の中身、つまり補償内容をよく見てください。自分とペットのニーズに合っているのか?当たり前のことですが、そこが一番大事です。
③ 窓口清算対応かどうかについては、補償内容とは関係のない部分の議論です。動物保険を選択する際には、切り離して考えるべきだと私は思っています。また、窓口清算は常にどんな時も可能ではないですし、使えたと思った後にやっぱりダメだったと、ひっくり返される可能性もあり得ます。日本の国民皆保険制度とは全く違いますのでご注意を。
おしまいに、保険に入ろうかどうか迷っている方への院長の個人的意見です。
たしかに、保険に入って安心することも多いですよね。毎度の通院から補償があれば気軽に病院に行きやすくもなります。気軽に来ていただくことで、病気の早期発見と完治につながることもありますから(実際に多く経験します!)、そこは大きなメリットかもしれません。また、当面保険に入るつもりのない方でも、どんどん新しい商品が生まれてくるのが保険の世界です。ですので、「あ、これイイね!」っていう商品が出てくるかもしれませんので、時々は情報を仕入れるのもアリでしょう。
もしも、「どうしよう・・・。保険に入るかどうか、今すご~く悩んでいる!」という方がいれば、ぜひ候補の一つに入れてほしいのが「貯金」です。悩んでいる今にでも、すぐに始められて、シンプルだけど確実!
動物には通帳がないから実感がわかないかもしれませんが、ペットを家族に迎え入れた日から、月に〇〇円と決めて貯蓄してみるのも、1つの方法ですよ。お悩みの方は検討してみてくださいね。
それでは。